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エロゲー 霞外籠逗留記

狭霧にかすむ大河の中州に、大きく古めかしく、そして迷路のようなその木造の建築物は佇立していた。一つの町ほども巨大なそれは、『旅籠』―――なのだという。青年を案内してきた渡し守の女はそう語り、『旅籠』の中へと小舟を漕ぎ入れる。そして青年は、圧倒されて言葉を失う。旅籠の中は、一つの建物だというのに、果てしなく広大で、複雑で、混沌とした様相を呈するほどだったから。幾重にも連なる回廊、橋楼、渡り廊下、その隙間を縫うようにして巡らせられた水路―――そう、大河の水は旅籠の中にまで導かれ、人々の様々な用に供されていた。旅籠の情景に立ちつくす青年に、渡し守は囁きかける。―――お好きなだけ、逗留なさると良い―――渡し守の女は、旅籠を預かるという、まだ年若な令嬢に言い含め、かくして青年はこの不可思議な宿の客となる。しかし客になったはいいのだがこの青年、いかなる経緯かは定かではないが「記憶を失っており」、自分がどういう事情でこの旅籠に来ることになったのか、いつまでここにいるつもりだったのか判然とせず、頼りないことおびただしい。―――よろしいのですよ、あなたはお客さまなのですから―――令嬢の厚意に甘えるまま、一室を宛ってもらった青年。なにもかも曖昧な状況であるにもかかわらず、旅籠はどこかしら人を惹きつけてやまない雰囲気に満たされており、青年も次第に腰を据える気分になる。それは旅愁……というよりむしろ郷愁といった感慨に近くて、旅籠は世事に倦んだ人間の心の琴線を優しく慰撫するような風物で構成されていた。記憶を失っている青年にとってさえも。さて、無為ながらも穏やかな日々ばかりが過ぎていくかに思われたのだが、青年はやがて些細なきっかけから奇妙に心騒がせられる女たちと知り合うようになる。たとえば朽ちかけた温室の、濃緑の葉陰から聴いたのは琵琶の爪弾きだ。南国の熱気を伝える樹々の陰に撥を遣っていたのは琵琶法師の―――女。歌を、曲を、物語を探しているのだという。あるいは黄昏の残照垂れこめる書庫、暇潰しにと本を漁っていた青年のそばに、いつの間にか玲瓏と佇んでいたのは女性司書。淑やかなのにどこか淫靡を漂わせる彼女は、人の噂には「図書室の鬼女」なのだとか。旅籠の令嬢もまた、それまでは見えなかった翳りを漂わせるようになり、彼女たちとの交わりを深くしていくにつれ、青年は一つの葛藤を抱くようになる。―――いったい自分は、この宿に居続けていいのだろうか――――――帰るべきところがあるのなら、帰らなくてはならないのではないか―――
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エロゲー 星継駅擾乱譚

どことも知れない世界の、どことも知れない辺境の荒野に佇立する巨大な『駅』。幾つもの駅が集合した姿であり、一つの都市ほどの広がりを持つそこの片隅で、その日暮らしを送っている『二人だけのサアカス団』。団員は座長の少年、オキカゼ・Bと、相方であり一人見世物である三眼の女、沙流江だけ、だ。この二人、小さな移動舞台で辺境各地を巡り、怪しげな興行を行っていたものの、この駅まで辿り着いてとうとう移動舞台が動かなくなってしまい、以来しみたれった停滞の日々を余儀なくされていたのだ。「どうにか一ッ旗、上げてぇよなあ。こいつをもう一度、動かしてよう」「だねえ。なにかこう、派手に人目を惹く、大一番をやらかしたりてさ」そして───その二人の願いは叶えられた。ある日、それまでうんともすんとも言わなかった移動舞台が、二人の思惑を越えた、暴走を開始したことによって。一度動き出してしまった移動舞台は二人がどうやっても止めることはできず、駅内のあらゆる場所を問わず爆走していく。始めは二人だけのトラブルだったのに、そのうち駅に住む人々を巻き込み、雪だるま式に騒動を膨れあがらせながら。二人と移動舞台の暴走は、終いには駅全土を蹂躙して───
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エロゲー 星継駅淫乱譚

どことも知れない世界の、どことも知れない辺境の荒野に佇立する巨大な『駅』。幾つもの駅が集合した姿であり、一つの都市ほどの広がりを持つそこの片隅で、古い列車を改装した『映画車輌』が今日も映画を上映している。この映画車輌、駅の広報局に所属して、普段は情宣用のCM映画や一昔前の娯楽映画などを流しているのだが、一部の常連客にはもっと別の映画をこっそり見せることがある。それは、いわゆるところのポルノ映画、ピンク映画。それだけならまだしも、この映画車輌で上映されるポルノ映画は、何故か駅に住む人々の情事の様子を映したものばかり。(そしてSEXに耽る者達は、自分達のそんな姿がいつの間にか映画になっていることなど知らずにいる)今日も今日とて映画車輌で秘かに流されるピンク映画は、やっぱり駅の住人達の情交の有り様で───
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エロゲー 紅殻町博物誌

主人公にはいまだはっきりしない幼い頃の記憶がある。それは子供の頃、山形の祖父母の家に預けられていた折り、おそらくは近所と思しい町の一角でよく遊んでいたというものだ。しかし彼が長じて、思い出話の折りなどにその町のことを話してみても、父母はどうにもその町のことははっきりとは知らず、主人公自身もその街並みがどこだったのか、記憶が定かではない。そんなある時、主人公が通っている大学の研究室で資料整理をしていると、奇妙なノートが発見される。どうやら東北のとある町の歴史や事物についての記録らしいのだが、その内容がいささか突飛に過ぎて、資料棚の奥深くで忘却されていたらしい。ところが主人公は、そのノートの記述者を知っていたのだ。その人とは、行方不明となっていた彼の叔父。その叔父というのはいわゆる地方の郷土史家で、近郷の記録などを集めていたらしいのだが、ノートの中にかつて主人公が過ごしたあの町の事が書き記されていた。どうやら叔父のノートというのは、その町についての歴史や事物を紀行文式にまとめた手記らしいのだが、どうにも信じがたく突飛な項目や図録ばかりで埋められている。しかもところどころに項目名ばかりで、「詳細不明」「現在調査中」といった空白の欄がある。そして主人公はノートに目を通すうち、名称のみが記されていて詳細不明とされている物品に、記憶が有ることに気がつく。と言うことは、もしやこの手記は完全な夢物語ではなく、どこかしら現実に根ざした部分もあるのだろうか?主人公は今では記憶もあやふやなその町への郷愁も手伝い、手記に書かれた事柄へ強く興味を抱くようになる。幸い学校は長い夏期休暇も近く、時間はたっぷりある。叔父の手記の不明部分を埋める、とまではいかないかもしれないが、なんらかの発見があるかも知れないと、主人公は帰省することにする。かくして主人公はそのノートを頼りに記憶を蘇らせ、どうにか思い出の町にたどりつくのだが、その町というのは叔父のノート通りに、様々に奇妙な事物、風俗が満ちあふれた不思議な町だった。主人公はその町、「紅殻町」で様々な「珍奇物品」に出会い、そして町に秘められた不思議に触れていくことになる。
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エロゲー 星継駅年代史

過去は永遠に失われず───現在は不変であり───未来は待ってはいてくれない───これは『駅』の物語。かつては星々と星々を繋ぐ中継ステーションであったけれど。人々はその本来の姿を忘れ去り、ただ大地上の巨大なタアミナルとして認識されている『駅』。それでも世代は移り変わる。『駅』は歳月のうちにおずおずとその本来の役目を取り戻し、人々はまた星々の世界への道を少しずつ取り戻していく。数世代に渡って交流が途絶えていた軌道上の『駅』との連絡が復活し、他の惑星との往来も細々とでは蘇りつつある、そんな時代もやがては訪れる。ただそんな時代にあっても、『駅』は全ての秘密を明かしたわけではなく、訪れる人々と駅の住人によって、また新たな扉は開かれて───
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エロゲー 星継駅淫代史

何時とも知れない時代、何処とも知れない荒野上に存在する、巨大な『駅(タアミナル)』。この駅を巡っての、過去から現在、そして未来にと渡る物語、『星継駅年代史』。この星継駅年代史に登場したキャラクター達のHシーン二編に、本作オリジナルのHシーン一篇を加えた、都合三篇からなるのが『星継駅淫代史』である。物語は、駅の広報宣伝用の『映画車輛』が、裏稼業としてやっているポルノ映画の秘密上映会と言う体裁をとる。何故か映画車輛には、駅でセックスに耽る者達の盗撮画像が流れてくるのだ。
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エロゲー 星継駅疾走軌

「ワタシ、お待ちしており、ました。過去、と。未来と。現在、と。溶け合います。この列車、にて。アナタ様の、ご乗車を。お待ちして、おりました───」どことも知れない世界、何時とも知れない時代の荒野の何処かに佇む『駅』。その『駅』を覆う深い霧。滅多にない濃霧。濃く密な霧の中に聳立する巨大な影がある。高く、長大で、得体の知れない機械の塊。駅の中で忘れ去られた一つの伝説。それが今蘇る。その鋼鉄の腹の中に、過去と未来と現代の、駅の人々を呑みこんで。その名は───亡霊列車。駅に出現した、忘れ去られた伝説である亡霊列車。その車内では、奇妙なことに駅の各時代を象徴する者たちが乗り合わせていた。なぜ時間を越えて自分たちが集ったのか。その理由も、目的地も定かならぬまま、彼らはこの異様な列車の客となる。やがて亡霊列車の、その異様な目的が判明されるとともに、列車自体が乗り合わせた者達に不穏な意思を示して魔手を伸ばすようになり……彼らはこの奇怪な列車の中で何を見るのか。果たして無事、逃れられるのだろうか。
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エロゲー 星継駅淫走軌

どことも知れない世界、何時とも知れない時代の荒野の何処かに佇む『駅』。その『駅』を覆う深い霧。滅多にない濃霧。濃く密な霧の中に聳立する巨大な影がある。高く、長大で、得体の知れない機械の塊。駅の中で忘れ去られた一つの伝説。それが今蘇る。その鋼鉄の腹の中に、過去と未来と現代の、駅の人々を呑みこんで。その名は───亡霊列車。駅に出現した、忘れ去られた伝説である亡霊列車。その車内では、奇妙なことに駅の各時代を象徴する者たちが乗り合わせていた。なぜ時間を越えて自分たちが集ったのか。その理由も、目的地も定かならぬまま、彼らはこの異様な列車の客となる。やがて亡霊列車の、その異様な目的が判明されるとともに、列車自体が乗り合わせた者達に不穏な意思を示して魔手を伸ばすようになり……彼らはこの奇怪な列車の中で何を見るのか。果たして無事、逃れられるのだろうか。
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エロゲー 信天翁航海録

―――長く、幾つもの国にまたがる大きな戦争の後だった、のかもしれない。あるいは経済、市場が原因もわからないくらい長い事混乱していた、のかもしれない。とにかく世界は全体的に混沌として、薄暗く、貿易なども混乱の最中にあった。それでも人々は懸命に生きていたし、国自体はぐらついていても、それなりに逞しく、物資も民間レベルでやりとりを続けていた。そんな物資を運ぶボロ船一隻。その名も信天翁号(アルバトロス)。大陸から大陸へ、港から港へ。扱う品はどうにも素性の怪しいものばかりだが、捌けば大層なお足になる。そうやってもっぱら癖のある物を扱っているせいか、船員達も一癖二癖ある連中ばかり。そしてこういう癖のある個性というのは、変梃な事件を招き寄せる。もとより荒くれたピカレスクロマンに事欠かなかった信天翁号だが、主人公が乗りこんで以来怪事件と遭遇する機会が加速的に増えていく。それはまだ世界が薄ら暗かった頃の、怪しく騒がしく、そしてどこか物哀しい船と海との物語。奇妙な船員達が、それぞれの奇癖に振り回され悩みつつ、愉快で楽しい破局へと突入したりしなかったりする物語。ただし破局から逃れたとしても―――船員達が戻るのは、結局信天翁号しかないのだった。やがて主人公は、それぞれに落ち着き先を見出した筈の船員や客達が、何故か戻ってきてしまっている信天翁号で最後の航海に赴く――――――なんだ、結局みんな、この船しか居場所がないんじゃあないかッ!?―――
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エロゲー 花散峪山人考

―――それは過去。けれどほど遠からぬ、この国のむかし―――二つの大きな戦争の間。街には電気の明かり灯り、鉄とセメントの建物が目立つようになっていった時代。一方、まだ山々には前人未踏の原生林が多く残り、その深い影の中に伝説、伝承を潜ませていた時代。濃密に立ちこめる山気と、分厚く積もった落ち葉とを踏み乱し、駆けゆく者がある。そう、樹々の間に間を荒々しく駆けてゆくのは、修羅だ。復讐の炎に我が肉を炙る、鬼だ。最愛の女を無残にも殺められた青年の、復讐の炎にドス汚れた瞳が、仇の姿を深山の中に追い求める。仇、仇、憎むべき敵。青年が追いかけ、滅ぼさんとする仇敵とはなにものか。人も通わぬ深山に巣くい、跳梁し、翻弄するそれは―――人か?山の怪か?それは山人。町里に住まう人々とは異なる、不思議、異形のモノ達。―――これは、復讐の物語―――最愛のものを奪われた青年の、山野を駆け巡り追い求め、仇はおろか、関わった者までも巻きこんで、滅ぼしていく物語。
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